年齢を重ねて決めたこと。暮らしの引き算、人との足し算、家族との割り算です。
やっかいなのは引き算。
ある年齢になってから「したいこと」しかしない生き方に切り替えました。小さなことも納得のいかないことには同意せず、文句は言わないけれど、しない。ひとつが義理の葬式に出はないこと。葬儀は家族や親しい方たちとの最期の大切な場です。第三者の出る幕ではないのでは。
それぐらいのこと、と思われるでしょうが、それぐらいの、なんと多いことか。年齢を重ねると財布に結構響くのです。
何かを買ったら何かを捨てる。
増やしたいのは人、です。どう足せるかは、今の自分の器量によりますね。
割り算は親子関係です。年齢を重ねると、互いに変化が出ます。結構子どもに気持ちをズタズタにされる人が多いよう。割り切れないのだとあきらめ、いなす方法を身につけたいものです。
美術家の横尾忠則氏(81)が、80、90代の現役の芸術家をインタビューした著『創造&老年』はおすすめです。終活なんてとんでもないのです。
横尾忠則氏「身体の中で心と体、魂。何が一番エライかって、脳がすべてを司って一番といわれるけど、肉体よりバカです。肉体はウソがつけない。脳はいくらでもウソをつき、すぐ大義名分で言い訳を始める。理屈の正当化を行なう。身体の声に従わず頭の声に従うと、ろくなことはない。身体の声は寒いと寒いと正直です。役に立つのは子ども時代の経験や感覚。そういう不透明なものが全部役立つ。子ども時代の経験は全部身体で得たもの。それ以降の経験は全部頭で得たものですから」
画家・野見山暁治氏(94)「人間だけが年齢に支配されて自分で行動を制限している。他の動物は、自分が歳とったなあとか思わない。人は年齢を知っているばかりに、そうなっている」
小林秀雄氏「老人意識を持つべきだ。この年で若者のような振る舞い、考え方をしていては、歳をとった値打ちがない」
写真家・細江英公氏(84)「自然に老人になるんじゃない。老人は自分からなるものだ」
作家・佐藤愛子氏(94)「元気の秘訣はわがままに暮らすこと。嫌なことはしない」「欲望は生きている間に浄化していくもの。
だから年を取るって必要なんです。