好奇心のまま~瀬谷道子が見つけたこと

インタビューしたり取材して、はっとしたことを紹介。いいこと、楽しいことはまだまだこんなにあるよ

すぐ役立つことは、すぐ役立たなくなる

自粛のただ中、友人から「この本いいよ、図書館しまってるから、本棚からだして改めて読んだ。送るから読んで」との電話。

彼女のお勧めは、米原ユリの本らしい。私のおススメは「奇跡の教室 エチ先生と「銀の匙」の子どもたち」。主人公は橋本武という灘高の教師の話。まだ灘高が名を知られてない頃のこと。

彼は国語の授業の革命を起こす。教科書もノートも使わず、ただ「銀の匙」という薄い本1冊を中学3年間かけて読ませる。

それを30年間続けたという。この本は、ある男の少年時代の話。見聞きしたことが、繊細な文で綴られている。

橋本先生は、これを使って、生徒の興味で脱線していく授業、分からないことが全くない領域まで1冊の本を徹底的に味わい尽くす授業をしたという。

丑という言葉がでると、十二支について、考える。甲子園球場の甲、還暦と、どんどん逸脱していく。

こんな授業を聞いた生徒は、自宅までの帰り道、神社や寺の名前、駅の看板など、すべてが意味のあるものとして、映るようになったらしい。

凧揚げのシーンが出てくると、美術の先生と、凧づくりをさせ、みんなで凧揚げをする。

「生活周辺のことは全部国語の力にな」と、橋本先生は言う。

だからあえて遠周りする授業をしたんですね。先生の授業の根幹は「すぐ役立つことは、すぐ役立たなくなる」。

でも、いまや、すぐ役立つものばかり追求。より便利をおいかけて、「すぐ役立たなくなった」ゴミの山〜。

本を読もう。