好奇心のまま~瀬谷道子が見つけたこと

インタビューしたり取材して、はっとしたことを紹介。いいこと、楽しいことはまだまだこんなにあるよ

自分を知る

「自分を知る」というのはなかなかできないもの。舞踊家のNさんにいいことを聞いた。「お面のワークショップ」。
 六十六歳。教師を四十五歳で退職した理由は「やりたいことをやって」人生を終えたかったから
 
。表現したいことがどう演じれば伝わるのか、とことんそこにこだわってみようと思った。Nさんの踊りは物語をなぞるのではなく、自然のなかに身を置きそのときの感覚を味わうように体を動かすもの。それこそ感じる自分が勝負なのだろう。
 
稽古場には約四十個のお面と同数の、全身をおおう衣装が並べられ、全身が映る大きな鏡があった。「なんでもいいからつけてみて」といわれ、ひょっとこに近い顔の面をかぶり、青い布を巻きつけた。するとNさんは音楽を流し、「好きなように動いて」という。そんなこと言われたってと言いつつも腰がクックッとなぜかリズムをとっていたりしてー。
 
全身が隠れていると思うと大胆になるよう。その意外性を存分に面白がれと言う。
 Nさんが演じる舞台は神社やお寺り境内で夜。音楽はなし。暗い境内の鐘楼のあたりだけをライトアップし、風が通り抜け、虫の音が聞こえるなかで、自然に溶け込むように踊る。
 「知らなかった自分とめぐり合える面白さがある」というNさん、「ワークショップは新しい自分の発見」と言い切る。
 小学生たちのワークショップをのぞいて納得。お面と衣装をとっかえひっかえして決定。全身を鏡に映していたかと思うと何か感じるのか自然と動きだした。
 音楽が入ると違う動きになり、ほかの子に手を差し伸べて一緒に踊ろうと誘う仕草を見せる子も。感想を聞くと「デカくなった気がした」「体がフワァと軽くなった」と、未知の体験にゾクゾクしていました。
 Nさんは「身体と心は本来一体で体の緊張を解いていくことで心が解放され、心の解放が体の緊張を解いていく。両方に働きかけながら体をほぐしていくと無理をしない自然な自分に戻れるはず」と話す。でも知らない自分にいまさら出会うのも怖いかも、ね。