好奇心のまま~瀬谷道子が見つけたこと

インタビューしたり取材して、はっとしたことを紹介。いいこと、楽しいことはまだまだこんなにあるよ

エッセイを書く条件とは

 今年のエッセイ塾の年頭は、エッセイを書く条件から

恋文が美しいのは、●思いが必死であること ●伝えたい願いが切実で深いこと ●ウソがないこと と言われます。

思いが必死というのは、意欲の強さ、伝えるだけでなく、相ますかる。伝えたい思いが深いとは内容の問です。 ウソがないとは、吐露する勇気でしょう。

エッセイを書くには 恋文を書くつもりでこの3条件を満たせばいいと言われますが、この条件を満たす、名文があります。

 マラソン選手の円谷幸吉が昭和43年1月、自死する直前に書いた文です。

「父上様 母上様 三日とろろおいしゅうございました。干し柿、もちもおいしゅうございました。

敏雄兄、姉様、おすしおいしゅうございました。

克己兄、姉上様 ブドウ酒とりんご酒おいしゅうございました。

巌兄、姉上様 しそめし 南蛮漬けおいしゅうございました。

喜久造兄、姉上様 ブドウ液 養命酒おいしゅうございました。又いつも洗濯ありがとうございました。

幸造兄 姉上様 往復車に便乗させて頂きありがとうございました。モンゴいかおいしゅうございました。

正男兄 姉上様 お気を煩わせて大変申し訳ありませんでした。

幸雄君 秀雄君 幹雄君 敏子ちゃん ひでちゃん 良介君、敏久君 みよ子ちゃん ゆき江ちゃん 光江ちゃん 彰君 芳幸君 裕ちゃん キーちゃん 正綱君 立派な人になって下さい。

父上様 母上様 幸吉はもうすっかり疲れ切ってしまって走れません。なにとぞお許し下さい。気が休まることもなく、ご苦労、ご心配をお掛けし申し訳ありません。

幸吉は父母上様の側で暮らしとうございました」

 

自殺を覚悟して愛する兄弟に最後のメッセージを送る思いは必死。ご馳走の礼を言いつつ、どんなに家族を愛していたか手にとるように分かります。

何が人の心をゆさぶるのか、分かります。