好奇心のまま~瀬谷道子が見つけたこと

インタビューしたり取材して、はっとしたことを紹介。いいこと、楽しいことはまだまだこんなにあるよ

家族

「家族っていやらしい?」。
自分史とエッセイの教室を開いて6年になる。ときどき生徒さんの作品を読み合う。11月に開いたとき、家族や愛をテーマにした作品があり、話が弾んだ。
 
書いたAさんは、テレビのインタビューで佐多稲子さんが自分にとって家族とは何かと尋ねられ、いやらしいものですね、と答えたことを紹介し、「そのときは何がいやらしいのか合点がいかなかった」という。
 
「いやらしい」とはなかなか意味深だ。戦中に育ち、わが子にはやりたいことはやらせたいと一生懸命育てた子どもにそっけなくされる。「尽くすことは相手に依存していることなのだと気付いた」と書いていた。
 
今離婚した息子の孫をもう10年以上ひとりで育てている。精神的に病んでいる孫ははたちを過ぎ、彼女に手をあげることもあるという。80を前にした体にはきついとこぼしていた。
 
しかし息子は自分のことばかりで親はしてくれて当然という言葉しか返ってこないらしい。Aさんはつい先日、「私だってきつい。そんな考えならお前が息子の面倒をみなさい」と、初めて声をあらげたらしい。
 
しかしすぐ「困っている息子を見捨てるわけにはいかん。仕方がないも仕方がないで自分の人生は終わるのだろう」と言いつつ、「せめてエッセイを書きに出かけるときほっとする」のだと話した。
 
Aさんは作品をこう締めくくっている。「愛とは考えるほど難しい。肉親の愛は切ないものがある。切っても切れない親子の縁―。やっとこのごろ佐多稲子さんのいった『いやらしい』という言葉が分かってきた。