好奇心のまま~瀬谷道子が見つけたこと

インタビューしたり取材して、はっとしたことを紹介。いいこと、楽しいことはまだまだこんなにあるよ

今も続く「戦争」

ベトナム残留日本兵をご存知でしょうか。

以前、私が出版(『越後のBaちゃんベトナムへ行く』)を手伝い、松阪慶子主演で映画化もされた著者・ハノイ在住の小松みゆきさん(70)が、この家族をずっと追いかけていてこのほど、彼女がコーディネーターのドキュメンタリー「遥かなる父の国~ベトナム残留日本兵家族の旅」が放映されました。小松さんも「ウィメンズ・ステージ」の読者でした。

 

ベトナム残留日本兵」とは第二次大戦後、ベトナムに残り対仏独立戦争に貢献した兵士で約600人。現地で家庭を持ち、そこで生きる覚悟をしたものの戦後、家族に黙って単身で帰国せよと宣告されたのです。残されたベトナムの若い母親たちは生まれて間もない子どもたちを抱え、極貧の中、ひたすら夫を待ち続けました。成長した子どもたちが父を恨むより孝行できないことを悔やむ涙に胸が詰まります。

 

家族を一軒ずつ訪ねて思いを聞き、父親探しをしてきた小松さん。2005年には戦後60年の特集番組として日本兵家族を取材した経験があり、今回はそのときのスタッフが再結集して挑んだものとか。

 

番組は、子どもたちが「祖国」日本を訪れた7日間を追います。「今の家族に迷惑ではないか」と悩む「子どもたち」でしたが、異母兄弟に会えたり父親の墓参りができる等思いもよらぬ出来事が起き、彼女への感謝は並々ならぬものでした。

 

番組作りは困難極まりなかったようで、戦争にまつわるテーマは慎重にとベトナム外務省の了解がなかなか出ず、ドキュメンタリーなのに台本を出せなんて、とんでもないことを要求されたようですが、「2018年は日本ベトナム国交樹立45年、日本兵と家族を知ってもらうことで両国の理解はさらに深まる」と訴え続けました。

 

 その裏には彼女が数少ないベトナム語を話すディレクターとして何度も取材した経験が生きたようで、培ったのが「しっかり意図を伝えて納得させることができれば、外務省のスタッフも力強い味方になってくれる」こと。

 

団塊世代の女性の力を見た思いでした。