好奇心のまま~瀬谷道子が見つけたこと

インタビューしたり取材して、はっとしたことを紹介。いいこと、楽しいことはまだまだこんなにあるよ

元気でいることが求められすぎてないかな

最近ヘンじゃないと感じることが多い。歳を重ねると、元気でいることがとても求められるからです。この歳まで使った身体、茶碗だって欠けるし、下着だって黄ばんでくるのに元気でいられるわけがない。

 

ある作家いわく「元気でいることが求められるあまり、老人が安心してくつろげるところがなくなった。うまく歳とったなあと感銘を受けるのは稀で、ゆったりとした落ち着きの感じられるいい老人がすっかりいなくなった。元気ですねと元気なことを祝福されることはあっても、いい老人になったなと感銘を受けてもらえるのは稀。今存在するのは、扉や柱に頭をぶつけて顔をしかめる気ぜわしい人ばかりのような気がする」。

 

「いい老人」って初めて聞いた気がします。自分はとてもお呼びではない。物によくぶつかるようになったし、何もない場所なのにつんのめりそうになります。

 

先日は道路のまん中に大の字でこけてしまいました。こういう場合、どう起き上がるかが非常に難しい。平気でスックと立ち上がるほど機敏ではなく、結局ヘラヘラ小さく笑いながら「平気だもん!」と心はいち早くその場から逃げていました。

 

どうやら年齢を重ねていくと気持ちと動作の間に微妙なズレがあるらしく、体の動きが追い付きません。身体の一部が遅れをとって残ってしまい、どこかとぶつかってしまうようです。

 

これは先の作家も同様のようで、「近づいてくる人を素早く避けた気でいても、よけ方が足りないのか身体の一部が接触する。身はかわしていても相手の下げている紙袋のどこかに当たる。失敬と謝るものの知らん顔をして行き過ぎる人が多い。もう少し気を配ってくれたらいいのにとか、こっちばかりが悪くないのにと恨みがましく振り返るが、みな忙しそぅに去っていく」と寂しさをひとくさり。

 

「歳をとっても下品になってはいけない」とはA子さんの母親の口癖。「食べ物は人間の心を汚くする」とも言われて育ちました。そういうことか、と思い当たることがありました。

 

通っているスポーツジムの午前中の利用者の大半は、六十、七十代以上の人ばかり。女性たちがお仲間同士で食べ物やお土産をあげたりもらったりする場面をたびたび見るのです。A子さんは特定のお付き合いは避けているのですが、目の前でやられるといい気分がしません。振る舞いが下品にならないようにしたいものですね。