好奇心のまま~瀬谷道子が見つけたこと

インタビューしたり取材して、はっとしたことを紹介。いいこと、楽しいことはまだまだこんなにあるよ

答えはひとつではない

エッセイ塾では生徒さんに学ぶことが多々あります。世代が異なることもあり、自分では思いもつかない視点に出会える面白さがあります。

エッセイの作品づくりには、平凡の中に非凡さを見つけることが肝要で、常識的な見方をいかに転じてみせるかが勝負どころ。平凡なことを平凡に書いていては、読んでくれる人に「時間のムダだ」と思われ、失礼になります。

Aさんは20代の頃、会社の研修会で出された不思議な問題についてエッセイを書きました。

問題のひとつは「鉛筆について、書くこと以外の使い方を挙げよ」。ざわざわとする研修生たち。なにやら含みのある顔で講師が手をたたいて解答をせかします。

出た解答は▽ものさしの代わりにする▽2本で箸として使う▽燃やして焚火にする▽たくさん集めて家を建てる▽削って爪楊枝として使うー等。

意外な答えに会場は一気に和やかな雰囲気になったようです。

次の問題は、「混んでいる電車で座る方法を挙げなさい」。この辺りから研修生の脳も心もほぐれて自由に思考できる態勢が整ったみたいです。

▽体の具合が悪いと言って席を譲ってもらう▽人と人との間に無理やり腰を振って入り込む▽脅かして席を奪い取る▽「座りたい」と言って泣く▽座っている人の膝の上に座る▽バッグをお腹に入れて、妊婦の振りをする▽座っている人と握手をしてその手を引っ張って立ち上がらせ、その隙に座るー等。

どうでしょう。そのぐらいのこと、思いつきましたか。

Aさんはその後結婚、そして離婚。3人の子どもに恵まれますが、ひとりには障がいがありました。

今60代のAさんは、ここまで多くの問題の、ナゾの解き方を教わってきたと言います。「問題が発生するとじたばたしてしまうものの、ひと呼吸おいて答え探しをする。辛いことや絶望的な出来事があっても、多くの人に支えてもらい、長い時間をかけて自分の責任で答えを出してきた」のです。それは少しでも納得する人生にしたいからでした。

いつも心にあるのはこんな言葉でした。「答えはひとつではない」。