好奇心のまま~瀬谷道子が見つけたこと

インタビューしたり取材して、はっとしたことを紹介。いいこと、楽しいことはまだまだこんなにあるよ

『50、60は花なら蕾、70、80花盛り』

このタイトルの本の著者はⅠ09歳で亡くなった声楽家の嘉納愛子さん。旧家の造り酒屋の男性と結婚、一時は音楽から離れたものの、ひとり息子の死を機に音楽活動を再開。大学などで80歳近くまで教鞭をとっていました。Ⅰ07歳のときには「Ⅰ00歳をひと区切りとすれると、今は小学校に上がる年になる」と笑ったという嘉納さん。

とにかく好奇心旺盛でした。学びたい、いいものを聴きたい、きれいなものを見たい、おいしいものを食べたい。欲張りに暮らしていたらいつの間にか歳を重ねていたとかで、世間との関わりをなくさずに過ごすのがいいそうです。

 なんでも食べます。肉を食べるし甘いお菓子も好き。年齢を気にして粗食にするのでこなく、バランスよくおいしくいただきます。

以前取材した70代の漫画家Aさんのことを思い出しました。朝から丼飯でした。アイデアを四六時中考えているため頭は常にフル回転。外を歩いていると目についた店に飛び込んで天丼なんかも食べてしまうらしい。

そして公園や喫茶店で人を観察してジィーと見つめるわけです。真剣に見つめると交番に言いつけられますから、チラッと見ては頭の中で遊びます。想像を膨らませる。脳みそを刺激するのです。

「第二の人生に自信を持たせてくれるのは頭。シワがたくさんある脳は若いと言われますが、それには脳をフル回転させることが必要で、それも思考回路とは逆のことを考えてみること」とAさん。

例えばジュースを飲むとするとストローの気持ちになってみる。いつも踏みつぶされている靴になってみるのです。当たり前のことを当たり前に考えてはシワは増えないそうで、ちょっと違う角度でとんでもないことを考えてみるのが、楽しいのです。

「生活に華がないって? 誰でも一度は華が咲いたことがあるはず。平凡であっても、病気もせずに暮らせたその時期が、その人にとって華だったはず。でもその気持ちが長続きしないのは、華を大事にしすぎるからではないでしょうか。害虫を寄せ付けない、嫌みを言う人とは付き合わないという具合に。順調にすすんでいるときこそ敵を受け入れる度量が必要です。そうすると華は長く咲くのではないでしょうか」

赤と黒』の著者、スタンダール(フランスの小説家)の言葉を借りてこう付け加えました。「人生のほとんどすべての不幸は、自分に関することがらについて、あやまった考え方をするところから生じる。できごとを健全に判断することは、幸福への大きな第一歩である」

歳を重ねると出来なくなったことばかりに目がいくけれど、ポジティブに考えなくっちゃ、ね。