「芸術は人の心を温かくするもの、今こそ大切なはず」と話すのはひとり芝居のAさん(73)。コロナの影響に悩んでいます。
いつも公演していた施設では、160人の客席に30人、舞台に上がるのは10人との制約。別の施設は200人の客席に3分の2。「とても採算が合わない。舞台監督、音響等への支払いができない」ため、公演をあきらめたと言います。
それにしても舞台上の人数を決めてしまうなんておかしいよね。
Aさんは「無観客もひとつのやり方とは思う。むしろこれでもこういうものができると覚悟する。だからいつも以上のものができるかも知れない。でもお客さんを入れていいとなるとヘンなんです」とAさん。広い会場に30人。やることの意味がどこにあるのかと考え込んでしまうのです。
それにファンは高齢の方が多いため、家族に止められたりして来てくれるか分かりません。規制の中でやるということは相当な覚悟を持ってやらないと、自分たちもお客さんも、つぶれてしまうのです。
「芝居も音楽も、自分と同じように熱くなったり、前のめりに見ているような人がすぐ近くにいるとより感動する。隣の席が幾つも空いていたら、そんなことは感じられない。ナマだからナマの感触があって初めて成り立つところがあり、それがなくなるとつまらないものになるのでは」と危惧します。
4月、朗読教室を開いているAさんは、教室の発表会を控えていましたが施設の貸し出し禁止で延期。生徒さんの多くは年齢の高い方。7月に延期したものの、生徒さんの気持ちが萎えてきて、「もういい」となった人も。集団の稽古がいかに大切か知りました。
でも発表会は換気のために窓を開けることで木々が背景の役割となり、ゆったりした雰囲気もよく、みんな「気持ちがなごんだよう」に見えました。
やはり続けなければと心するAさん。夏の平和行事として戦争問題を取り上げた朗読劇も延期していましたが、今年は戦後75年という節目。やらなければとの声が上がっていて、公演に向けて力を入れる日々だそうです。