好奇心のまま~瀬谷道子が見つけたこと

インタビューしたり取材して、はっとしたことを紹介。いいこと、楽しいことはまだまだこんなにあるよ

聞く力 とは

作家・エッセイストの阿川佐和子さんの『聞く力』がヒットしています。『週間文春』の対談連載の体験をまとめたもので、インタビューとはなんぞやを説いたもの。
阿川さんとは八月、NHKで会いました。私も二十歳から新聞の仕事に入り、今も女性誌でインタビューの日々。軽く千人は突破しているはずと驚愕し、よそ様は何を一体申されるのか、興味をそそられました。
考えさせられたひとつは、人は日々呼吸をするごとくインタビューをしていること。道を聞く。値段を聞く。おしゃべりを聞く。人は生きる限りインタビューに始まってインタビューで終わるというそうです。
 それも聞く人によって受け止め方が違う。いい加減に聞く。迷惑そうに聞く。熱心に聞く。そこに「聞く」面白みがあるのだとか。
私も講演でよく触れますが、本人が「こんな話つまんない。来なきゃよかった」と思うや、椅子から立ち上がったとたん、何も覚えていません。聞こうという思いがない限り、声は届かないのです。
補聴器はすべての音を拾ってしまうそうですが、人の耳はほしい音だけが入ってきます。
もうひとつは「会話は生もの」。笑福亭鶴瓶さんの言葉です。インタビアーというのは、聞きたいポイントがある。でもその場になってみなきゃ分かりません。人はその日の体調、気分で違うからです。
 阿川さんは芝居や演劇に例えて「演者はその日の観客によっても驚くほどのパフォーマンスを見せる。だから同じ俳優の、同じ芝居を何度でも観に行く」と言います。
料理もしかり。常連の店のささいな味の変化を微妙にかじ分けてしまう私たち。いつも上質のものがほしいならロボットに任せればいいのです。うつろいやすい人の本質を味わってこそ、「けっこうでした」といいたくなりませんか。
会話はもっと刺激的で、そのときの雰囲気で二人の間にどんな化学変化が起こるか分からないというわけです。
私は明日から京都へ。三人の女性をインタビューするのですが、今までほとんどが想像していたのと違い、「生もの」の新鮮さを堪能しています。