8月のエッセイ塾では元NHKアナウンサー・山根元基世さんのインタビューを紹介しました。
山根さんが取り組んでいるのが子どもの話し言葉を育てる活動だからです。子どもの「言葉の欠落」の及ぼす影響がすごいのです。コロナ禍でますます進んでいくようで警鐘も込めてしゃべりました。
自分の気持ちをうまく言葉で表現できない。言葉で周りとうまくやっていけない。つい手が出てしまい、歯止めがきかなくなる。言葉の欠落がどんなに子どもを苦しめていることか。いろんな事件や問題をみても、思いを表現できないためにささいなことが大きくなることがあるようです。
必要なのは隣の人と心を通わせる言葉です。どんなタイミングでどういう言葉を使えば相手を傷つけずに気持ちいい関係が結べるのか。
人は8歳までの言語形成期に言葉を聞いて学習しないと言葉を獲得できないといわれます。「周りの大人の言葉をマネして学んで身に付け、大人になるってこういうことなんだと知って行く。でもそんな機会が今の子どもたちにあるでしょうか」と山根さん。
言葉で人間関係につまづくと人の協力は得られないし、いい人間関係がなければ人生を切り拓けません。そこで求められるのが地域の教育資源といわれる私たち世代。築いてきたものを子どもたちに出し合えば世の中は変わると強調します。
山根さんの話の中で出た、ある小児科医の医師の話は衝撃でした。蛍を見た後は脳の前頭葉がよく動くのに、テレビのアニメでは動かなかったのですから。
人の脳は前頭葉を得たことで言葉と笑顔を手に入れ、それでコミュニケーションを獲得し、考える力を獲得しました。でも電子機器からの映像刺激は視覚を司る脳の後東部しか動かしません。
そしてもうひとつ。言葉の力を信じる子に育てる大切さ。「どうせオレなんかがひとり反対しても」とあきらめる子が増えている中だけに、とても必要なことでした。
社会に向かって発言し続けることで世の中を変えることができると信じる子に育てること。でもまずは大人がその姿を見せないとだめなのでは。このコロナ禍、黙ってないでモノを言っていきたいですね。