好奇心のまま~瀬谷道子が見つけたこと

インタビューしたり取材して、はっとしたことを紹介。いいこと、楽しいことはまだまだこんなにあるよ

出会い

人は人の中で生きる
 
60代から何かを始める女性たちを取材して感じることだ。
 
Aさん。独身。気軽に寄れるたまり場をめざして開店。店内は多彩な陶器やらバッグなど手作りものがズラリと置かれている。
 現役時代は仕事と組合活動にフル稼働。やりがいがあった。家には寝に帰るだけ。
そして退職。「解放感が一杯だった。やらなくてはいけないというものがなくなりこれからは人間らしい生活になる」と期待していた。
 ところがだんだん、これは違う。こういう人生を願っていたはずではなかったと思うようになっていた。
 
話す相手がいない。誰とも声を交わさない日だってある。ときどき友だちと旅行したり町歩きはするものの、何かが足りない。
「退職したら旅行や趣味に没頭すると思っていた。でもそういうものに惹かれなかった。人と関わる仕事をしてきたし、それに喜びを感じていたから人と関わることをやりたくなった」
 
 そして「自分はこれからずっとひとりなんだ」と気付いたとき、これからは自分から関わっていかないと人とは触れ合えないのだと知り、自分が出かける場所を作ったのだった。
経営的には厳しいかもしれない。でも「趣味をやっても旅行にしてもお金はかかる。やりたいことをやってお金がかかるのは同じ。人は人としゃべったり外を歩かないとだめ。本来人はそういうことをしたいのだと思う」という。
 
 ピザ店を開店したBさんは50代で好きな仕事を夫の転勤で断念。悶々とする。
 夫の単身赴任も考えたが、家族は一緒にいようと夫婦で話し合った。何かに左右されず60歳過ぎても楽しめるものをと、54歳からカフェ学校に通う等着々と準備し、「所詮素人。無理はしない。手作りと助っ人に頼る」と決め、いろんな人に援助を求めたところ、農家の人、大工さん、パン屋さんといろんな助っ人がわんさか。「やれることを求めていたらどんどん知恵や情報が集まってくる」と喜ぶBさん、みんな関わることで夢をみたいのだろう。
 
先日インタビューした作家の言葉。「人とそんなに接していなくてもいい暮らしはできるかもしれないが、生身が発するエネルギーと接していないとどんどん孤立に向かうよ」。