好奇心のまま~瀬谷道子が見つけたこと

インタビューしたり取材して、はっとしたことを紹介。いいこと、楽しいことはまだまだこんなにあるよ

旅するエッセイ塾

 一泊の「旅するエッセイ塾」を六月十四、十五日、山梨・小菅村にて開塾。小菅村は標高六百メートルにある森林の村で人口は八百人足らずです。  きっかけは、ここでキャンプ場を経営する生徒・Aさんがいたこと。みんな、彼女のエッセイに登場する村が見たくてたまらなくなっていたのです。Aさんはここから四時間かけて毎月通っていました。
 彼女はシングルマザー。子どもを自然のなかで育てたくて暮らしをここに選択。村の良さをアピールしようと模索中でもありました。
 参加は五人。早朝東京を出発、幾つも乗り物を継いで昼前に到着すると、待っていたのは彼女手作りの十割そばと近くで採った山菜の天ぷらのお昼でした。
 散策の前に釘を刺したのは「自分の言葉で見たこと、感じたことを書く」。それも手垢のついた言葉を使わないこと。緑の文字は禁句としました。緑しかない村でどう書くのか。見ものだなあとひそかにニヤニヤ。
 さて山の淡い緑と風が心地よく、鶯が甲高く鳴くなか、渓流の続く森から森へと歩き、終点は温泉。バーベキューでお腹を満たした後、夜は「エッセイ塾」です。外は怖いほどの暗闇。講義は「観察力の不十分さ、ものを見る目の浅さ、勝手な思い込みに気付いてほしい。でもなんとかしようともがくことにこそ意味がある」とちょっと辛口で。
 木々、草花の表現を幾つもっているか、空気や風をどうとらえているか、触感・食感は。字のパワーに頼らずに書けるかどうかの挑戦です。
 原稿用紙に向かったのは一時間。聞こえるのは、木の揺れる音と鳥の声、川の流れがたまに届くだけ。
全員が一作書き上げワインで乾杯。飲みつつ作品をひとりずつ読み上げて講評しました。
 全員が違う視点で仕上げていてなかなかの出来。感性とは堀っていくことで磨かれるものと実感した塾でした。
 すると「全員のエッセイを村長に読ませる!」と声を上げたAさん。村の良さを村の人たちに分かってほしいと悶々としていたときだったとか。
 書くことは次の何かを生むんですね。酔いばかりのせいではなかったようです。