好奇心のまま~瀬谷道子が見つけたこと

インタビューしたり取材して、はっとしたことを紹介。いいこと、楽しいことはまだまだこんなにあるよ

声と体の不思議

「身体と声の健康教室」を開く、「こころの五線譜」が肩書きのAさん(六十四歳)。心理カウンセラー・ポピュラーボーカリストで、「心をほぐす音楽」といわれます。
「こころの五線譜」とは、心の琴線に触れる、細やかな心の音という意味。小柄でよく笑い、目で、笑え、笑えとあおるものだから取材中は賑やかなこと。
職歴がすごい。ピアノの先生に「音楽の世界にどっぷりいたら社会が分からなくなり心が伝わらない。音楽以外の仕事もやって」と言われ、売り子やホステスも。おかけで人の裏側をのぞき見る面白さ()も知りました。
昔は声のあまり出ない目立たない子で慰めが音楽だったとか。
「心と身体と音楽」について関心を持ったのはメヌエル病になってからです。ライブハウスで歌っていたときに人間関係に苦しみ、声を失ったAさん。身体によい発声法を見つけます。
 胃が硬いと内臓が硬くなり背中も硬くなって声が出ません。力を抜いて全身を揺らして身体を緩めるといい声が出ます。だからAさんの教室は発声練習ではなく身体のほぐしが中心。
身体が柔らかくなると息が柔らかくなり、優しさ、弱さ、冷たさなど臨機応変に息で表現出来るようになり、それがいい身体になった証し。
 病院で子どもの患者たちに歌って十五年になりました。最初はほとんど聴いてくれませんでした。病院の人に「自分が楽しそうではないし、無理して元気にしている。不安な気持ちでいる子には合わない」と指摘され、何のために歌うのかを知りました。
 教室に参加する「声がうまく出ない」女性たちにも、自分が心地いいこと、どう歌いたいのか感じているか問いかけます。
「いい思い出を歌うとき息は温かくて柔らかくなるから体にいい」とAさん。
 気になっているのは、息を止めるようにパソコンやメールに向かう若者たち。「どうして声を出さないの? ちゃんと息して声出して笑ってよ、声出して怒ってよといいたくなる」。
 息とは、「自分の心」と書きます。どんな思いを抱えているのか、息で伝わってくるそうですよ。