好奇心のまま~瀬谷道子が見つけたこと

インタビューしたり取材して、はっとしたことを紹介。いいこと、楽しいことはまだまだこんなにあるよ

若年性認知症の深刻さ

大阪に、若年性認知症の夫をもつ女性たちの取材に行く。映画で見ただけで、詳しいことは何もしらずにでかけ、その問題の深さに考えこんでしまった。問題は多くが夫婦介護だということ。妻の場合、愛した夫が、性格も変わり、まるで違う人間になつていくさまを何年も何年も見続けなくてはならないのだから「壊れていく」というのが実感だろう。穏やかで子煩悩だった夫が、攻撃的になり、子どもを無視していくなんてー。
 
そのひとりAさんから昨日手紙が届いた。夫は彼女を完全に忘れていて、家にいると、「お願いだからかえってくれ」とタクシー代を渡すこともあるという。同じ若年認知症の女性が夫を、自分の夫と信じ込んでいて、仲睦まじいところを見せられることもあるらしい。「一番いいのは本人のやりたいことを認めてあげることというけど、辛くてこれでいいのかと思ってしまう」と話す。「あなたの中のわたしがどんどん消えていく」。そんな相手と暮らしていく苦しさ。自分を失いそうになると思うが、Aさんは生きていくための3か条というのを教えてくれた。
 
どんなことにも感謝する心をもつ、人のせいで自分が不幸せになることは決してない、自分が自由に使えるのは自分の心だけ。夫はもう自分の思いを言葉にできないという。でもAさんは必ず声をかける。「元気で長生きしようね」。すると夫は「うん」と深くうなづいてくれるらしい。