好奇心のまま~瀬谷道子が見つけたこと

インタビューしたり取材して、はっとしたことを紹介。いいこと、楽しいことはまだまだこんなにあるよ

人は可能性にチャレンジ゛してこそ

「自分でできるから人に頼みたくないの」。そういわれてハッとしました
自治体主催のエッセイ講座の講師をしていますが、教えられることの多いこと。これは元ハンセン病患者の七十六歳のAさん。
Aさんは二年かけて脱稿。今本にする手伝いをしています。 校正原稿を持って、多摩全生園にある療養所の自室に出向きました。両手指はなく、足の感覚もありません。「教育は受けていないけど、体験くらいは書けるから。買い物で店の人がおつりを投げて寄こしたことがあった。私の病名が悪いのであってその人を責めても何もならない。偏見とは知る機会がなかっただけ。だから書くことで知ってもらいたいし、むしろみんなが体験できなかったことができたと思っている」と、書くことに挑戦しました。
七十歳からパソコンをマスター。メールからデジカメの写真の取り込みなんてお手の物。出向いたときパソコンで作った写真入りの来年のカレンダーを見せてくれ、「看護師さんたちが教えてほしいといってさ。教えてあげたの」と嬉しそう。
校正の仕方を教え、「赤字入れられますか? 誰か手伝ってくれないかなあ」と言うと、目を真っ直ぐ見て、「人はやろうと思うとなんでもできるようになる。やろうとすることが人であることじゃないかしら」とグサリ。ごもっとも。
 目の不自由な方たちに新聞を読んであげたくて、文字を習っていたことがありました。今あるものを大切に使いたい。目が見えるのだから目の見えない人の役に立ちたいのだと。
「人には誰にも可能性があり、役に立つことが人の努めではないかしら」。
 しゃべっているうちに、もっと原稿を入れたくなったというAさんに、「じゃ、打ち込んでメールで送ってくれますか?」と頼んだところ、なんと二日後に二千字の原稿がメールで送られてきました。
 Aさんが以前話してくれてことを思い出しました。「大切なのは人として生きていくということ。大変なこともあるけれど避けていてはだめ。それが生活するということだもの」。
一月、出版します。
前回の文章が尻切れトンボで、再度掲載。